1: 病院経営状況の調べ方を最初に把握|公開データで何がわかるのか
病院経営の改善を検討するとき、多くの経営者が最初に直面するのが「自院の状況が業界全体と比べてどうなのか、わからない」という問題です。
経営コンサルタントや業者からは「御院の経営は改善できます」という提案が次々と舞い込みます。
しかしその提案が本当に自院に必要なものかどうかを判断するには、まず自院の立ち位置を客観的なデータで把握することが前提になります。
これらを正しく読み解くことで、「自院の人件費率は全国平均と比べて高いのか低いのか」「病床利用率は地域の同規模病院と比べてどうか」といった比較が可能になります。
この記事では、病院経営の現状把握に使える公開データの種類・入手方法・比較の仕方を、調達・経営の実務経験をもとに体系的に解説します。
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1-1: 病院経営状況を調査する目的と公開データを使う理由
病院経営の状況を調べる目的は大きく3つに分かれます。
自院の現状把握
経営改善の第一歩は、現状の正確な把握です。
「なんとなく経営が厳しい」という感覚を、数値として裏付けることで、どこに問題があるのかが明確になります。感覚だけに頼った経営改善策は、問題の本質とズレた施策につながるリスクがあります。
他院・業界平均との比較(ベンチマーク)
自院の数値は、単独では良いのか悪いのかの判断ができません。
同規模・同機能の病院の平均値と比較することで初めて、自院の相対的な強みと課題が見えてきます。これをベンチマーク分析と呼びます。
外部への説明・交渉材料
金融機関への資金調達の相談、行政への補助金申請、職員への経営状況の説明など、外部に向けて経営状況を示す場面では、公開データに基づいた客観的な根拠が必要になります。
なぜ公開データを使うのか
コンサルタントや業者が提示するデータは、自社のサービスを売るために有利な切り口で加工されている場合があります。
一方、厚生労働省・総務省・福祉医療機構が公表するデータは、特定の利害関係なく収集・公表された一次情報です。
サイト運営者<br>プロアキ自院の判断の基準としては、こちらが出発点になります。
1-2: 自院・他院比較で把握すべき病院経営の現状と課題
2024年度診療報酬改定後の病院経営は、多くの施設で厳しさが増しています。
独立行政法人福祉医療機構(WAM NET)の調査によると、2022年度の医療法人病院における経常利益率の中央値はマイナスに転じており、特に中小規模病院での収益悪化が顕著となっています。
この状況下で自院の経営状態を正確に把握するには、以下の現状と課題を押さえておく必要があります。
収益面の課題
診療報酬の改定のたびに算定要件が複雑化しており、本来取れるはずの加算を取り漏らしているケースが増えています。また外来患者数の減少・在院日数の短縮化により、従来の収益モデルが機能しにくくなっています。
コスト面の課題
人件費の高騰が続いており、特に看護師・医療技術職の採用コストと賃金水準の上昇が収支を直撃しています。加えて医薬品・医療材料費の値上がり、光熱費の高騰といった物価上昇の影響も大きくなっています。
構造面の課題
地域の人口動態の変化により、これまでの患者数を維持できなくなっている地域が増えています。急性期・回復期・慢性期の機能分化が進む中で、自院の機能をどこに置くかという戦略的判断が求められています。
1-3: 病院経営改善事例につながる調べ方の全体像を解説
この記事全体の構成を最初に示しておきます。データ収集から改善実行まで、一連の流れとして把握してください。
Step1:基礎知識の整理(2章)
病院経営の仕組み・収益構造・費用構造の基本を理解します。比較分析の前提知識として必要です。
Step2:データソースの把握(3章)
どの機関が・どんなデータを・どこで公開しているかを把握します。闇雲に探すより、信頼できるデータソースを3〜4本押さえれば十分です。
Step3:指標の選定(4章)
自院の課題に合った比較指標を選びます。全部調べようとすると時間がかかるだけです。優先すべき指標に絞ります。
Step4:比較作業の実施(5章)
実際のデータ収集・整理・比較表の作成手順を解説します。
Step5:原因分析と改善策の立案(6章・7章)
比較結果から赤字の原因を読み解き、改善に向けた施策に落とし込みます。
Step6:体制・戦略の整備(8章・9章)
改善を継続的に進めるための組織体制と経営戦略の方向性を整理します。
2: 病院経営の仕組みを理解する|比較前に知るべき基本


公開データを読み解くには、病院経営の基本的な仕組みを理解しておく必要があります。仕組みを知らずに数値だけを見ても、何が問題なのかを判断できません。
2-1: 病院経営はなぜ厳しいのか|赤字が増加する原因と環境
病院経営が構造的に難しい理由は、「収益の上限が規制されている一方で、コストは市場原理で上昇し続ける」という非対称性にあります。
収益側の制約
病院の主要収益源である診療報酬は、国が2年ごとに改定する公定価格です。経営努力によって価格を上げることができません。患者数を増やすことで収益を増やす余地はありますが、地域の人口動態や競合施設の状況に左右されます。
コスト側の市場原理
一方で人件費・医薬品費・医療材料費・光熱費・設備維持費は市場価格に連動して変動します。特に近年は医療職の人材市場での競争激化により、採用コストと賃金水準が同時に上昇しています。
公的使命と経営合理性の葛藤
病院は地域医療を担う公的使命を持つため、採算が取れない診療科や時間外対応でも撤退できないケースがあります。救急・小児科・産科などはその典型です。経営合理性だけで判断できない意思決定が多い点が、一般企業の経営と大きく異なります。
2-2: 診療報酬改定・政策・地域医療の動向が経営に与える影響
2026年診療報酬改定の方向性
2026年度改定では、医療DX推進・地域包括ケア体制の強化・賃上げ対応が引き続き主要テーマとなっています。加算の新設・拡充が相次ぐ一方で、算定要件の厳格化も進んでいます。
厚生労働省の2024年度診療報酬改定では、「医療DX推進体制整備加算」「外来・在宅ベースアップ評価料」など新たな加算が創設されました。これらを適切に算定できているかどうかが、同規模病院間でも収益に大きな差をもたらしています。
加算を「取れる体制を作る」ことと「正確に請求する」ことの両方ができているかを定期的に検証することが、収益管理の基本になります。
地域医療構想の進展
都道府県が策定する地域医療構想では、急性期・回復期・慢性期・在宅の病床機能ごとに将来の必要病床数が示されています。自院の機能が地域の需要と合致しているかを確認することが、中長期的な経営戦略の前提になります。
2-3: 病床機能・患者数・費用構造から見る収益と利益の仕組み
収益の構造



病院収益の大部分は入院収益と外来収益から構成されます。
入院収益は「病床数×病床利用率×在院日数×診療単価」で決まります。この4つの変数のどこにボトルネックがあるかによって、改善の打ち手が変わります。
DPC(診断群分類包括評価)対象病院では、入院期間が長くなるほど1日あたりの収益が下がる仕組みになっています。
費用の構造
病院の費用は大きく人件費・材料費・委託費・減価償却費・その他経費に分類されます。
材料費率(医薬品費+診療材料費÷医業収益)は25〜30%程度が目安で、この水準を大幅に超えている場合は仕入れコストや使用量の見直しが検討対象になります。
利益の構造
医業収益から医業費用を差し引いた医業利益に、補助金収入などの医業外収益を加えたものが経常利益です。公立病院では繰入金(自治体からの補助)が医業外収益として大きな割合を占めるため、民間病院との単純比較には注意が必要です。
3: 病院経営状況を調べる公開データ一覧|全国の比較に使える情報源
病院経営の公開データは複数の機関から提供されています。それぞれ対象・内容・更新頻度が異なるため、目的に応じて使い分けることが重要です。
3-1: 厚生労働省や各年度の公的データで病院経営状況を把握する
①医療経済実態調査(厚生労働省)
診療報酬改定の基礎資料として2年ごとに実施される調査です。病院・診療所・薬局の収支状況が開設者別・規模別・機能別に集計されており、業界全体の収益動向を把握するのに適しています。
厚生労働省「医療経済実態調査」は、社会保険による診療を行っている全国の病院・一般診療所・歯科診療所・保険薬局を対象とした調査で、収益・費用・利益の状況が詳細に公表されています。
②病院経営管理指標(厚生労働省)
医療法人が開設する病院の決算書を基に集計した経営指標データです。人件費率・材料費率・医業利益率などの主要指標が規模別・機能別に整理されており、自院のベンチマーク比較に直接活用できます。
③医療法人経営情報データベース(MCDB・厚生労働省)
2023年度報告分から本格稼働した比較的新しいデータベースです。医療法人の経営情報が集約されており、法人単位での財務情報の比較が可能になります。今後データが蓄積されるにつれて活用価値が高まる情報源です。
④病院事業決算状況・病院経営分析比較表(総務省)
公立病院(地方公営企業として運営される病院)の経営データが都道府県別・病院別に公開されています。民間病院との比較には直接使えませんが、地域の公立病院の経営実態を把握するのに有効です。
3-2: 医療法人や地域の医療機関情報から外部環境と連携体制を確認する
⑤福祉医療機構(WAM NET)経営分析参考指標
WAM NETが提供する経営分析ツールで、自院のデータを入力すると全国・地域の同規模病院の平均値と比較したレポートを出力できます。



無料で利用できる実用性の高いツールです。
病院経営の数値比較を初めて行う場合の出発点として最適です。
⑥医療機能情報提供制度(医療情報ネット)
各都道府県が運営する医療機能情報のデータベースです。自院・他院の診療科・病床数・診療時間・設備・対応疾患などが確認できます。競合分析・地域内の機能分化の把握に活用します。
⑦地域医療情報システム(日本医師会)
日本医師会が運営する地域医療・介護の統計データベースです。地域ごとの人口動態・受療率・医療施設数・介護施設数などが把握でき、自院が立地する地域の需要構造を理解するのに役立ちます。
3-3: ランキングを見る際の注意点|全国平均だけではわからない理由
公開データを活用する際に注意すべき点が3つあります。
比較対象の設定が重要
全国平均との比較は参考にはなりますが、精度の高い分析には同規模・同機能・同地域の病院との比較が必要です。200床の急性期病院と100床の回復期病院を同じ指標で比べても意味がありません。比較対象の条件をどこまで絞り込めるかが分析の精度を左右します。
データの鮮度に注意
公開データには1〜2年程度のタイムラグがあります。直近の経営状況を反映していない場合があるため、「このデータは何年度の情報か」を常に確認してください。特に診療報酬改定前後でデータの意味が変わることがあります。
公立病院と民間病院の比較は慎重に
公立病院は自治体からの繰入金(補助金)が収益に含まれるため、民間病院と単純比較すると経営効率が実態より良く見える場合があります。比較対象を公立・民間のどちらに絞るかを意識してください。
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4: 自院・他院を比較するための重要指標|病院経営の分析視点
データソースを把握した次のステップは、何を比較するかを決めることです。
すべての指標を追う必要はありません。
自院の課題に応じた優先指標を絞り込みます。
4-1: 収益・人件費・コスト・資金繰りを把握する経営指標
医業利益率
医業収益に対する医業利益の割合です。一般的に2〜5%程度が健全な水準とされていますが、病院の機能・規模によって異なります。マイナスの場合は医業活動だけでは赤字であることを意味します。
人件費率
医業収益に対する人件費の割合です。55〜65%程度が目安で、これを大幅に超えている場合は人員配置・給与水準・業務効率の見直しが検討課題になります。
ただし高機能な医療を提供する病院ほど人件費率が高い傾向があるため、機能を考慮した比較が必要です。
材料費率
医薬品費と診療材料費を合わせた材料費の医業収益に対する割合です。
25〜30%程度が目安で、この水準を超えている場合は仕入れ価格・使用量・在庫管理の見直しが有効です。医療機器・ITシステムの調達コスト適正化も材料費率の改善に貢献します。
流動比率・当座比率
短期的な資金繰りの健全性を示す指標です。
流動比率(流動資産÷流動負債)が100%を下回る場合、短期的な支払い能力に懸念があることを示します。
4-2: 病床利用率・患者動向・診療単価から診療体制を分析する
病床利用率
許可病床数に対して実際に稼働している病床の割合です。一般病棟では80%以上が経営安定の目安とされています。低い場合は患者数の確保・紹介体制・退院後の受け入れ先との連携強化が課題になります。
平均在院日数
入院患者1人あたりの平均入院日数です。急性期病院では短縮が求められる一方で、短すぎると退院後の再入院率が上がります。DPC病院では入院期間Ⅱを超えた在院日数が収益性を下げるため、目標値との乖離を定期的に確認することが重要です。
外来患者数・新入院患者数
患者数のトレンドは経営の先行指標です。患者数の減少が収益悪化として現れるのは数ヶ月後になるため、月次での動向把握が重要です。特に新入院患者数の推移は、紹介体制・地域連携の効果を測る指標になります。
1入院あたり診療収益・1外来あたり診療収益
患者単価の変化は、診療内容の変化・加算の取得状況・患者構成の変化を反映します。患者数が維持されているのに収益が下がっている場合、単価の低下が原因であることが多いです。
4-3: 地域需要・施設規模・機能分化の視点で強化ポイントを見つける
受療率と人口動態
自院が立地する二次医療圏の人口動態・年齢構成・受療率を把握することで、今後の患者需要の変化を予測できます。高齢化が進む地域では慢性期・在宅医療の需要が増加し、急性期の需要は相対的に縮小する傾向があります。
機能分化の方向性
地域医療構想における自院の機能区分(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)と、実際の診療内容・患者構成が整合しているかを確認します。機能と実態がズレている場合、加算の算定漏れや不適切な患者受け入れが生じているリスクがあります。
競合施設との差異
同地域の競合病院と比較したとき、自院が優位性を持つ診療科・機能は何かを明確にします。強みを持つ領域に経営資源を集中させる判断の根拠になります。
5: 病院経営状況の具体的な調べ方|公開データで比較表を作成する手順
5-1: 比較対象の病院・クリニックを選び調査条件をそろえる
比較分析の精度は、比較対象の選び方で決まります。条件がそろっていない対象との比較は、誤った判断につながるリスクがあります。



比較対象を選ぶ際に揃えるべき条件は以下の通りです。
まず病床規模です。100床未満・100〜199床・200〜299床・300床以上といった区分で絞り込みます。規模によって費用構造・収益構造が大きく異なるため、規模が違う病院との比較は参考程度にとどめます。



次に病院機能です。
急性期・回復期・慢性期・精神科など機能が異なると、診療単価・在院日数・人件費率の目安が変わります。同機能の病院に絞ることが重要です。



そして立地・地域性です。
都市部と地方では人口密度・競合環境・給与水準が異なります。同じ都道府県内または同程度の人口規模の地域の病院を選ぶことで比較精度が上がります。
5-2: 必要なデータを収集し年度別に整理して状況変化を確認する
データ収集の順序
①WAM NET経営分析参考指標で自院の主要指標を全国・地域平均と比較する ②厚生労働省「病院経営管理指標」で同規模・同機能の指標と比較する ③医療機能情報提供制度で競合病院の基本情報(病床数・診療科・設備)を確認する ④地域医療情報システム(日本医師会)で地域の人口動態・受療率を確認する
年度別推移の把握
単年度のデータだけでは、今の状況が改善傾向にあるのか悪化傾向にあるのかが判断できません。最低3年分のデータを揃えて推移を確認します。特に以下のタイミングでの変化に注目してください。診療報酬改定年度前後・コロナ禍前後・設備更新や診療科の変更があった年度です。
5-3: 指標を一覧化して自院の強み・不足・改善余地を把握する
収集したデータを一覧化する際の基本フォーマットは以下の通りです。
| 指標 | 自院 | 全国平均 | 地域平均 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 医業利益率 | ○% | ○% | ○% | 要改善/良好 |
| 人件費率 | ○% | ○% | ○% | 要改善/良好 |
| 材料費率 | ○% | ○% | ○% | 要改善/良好 |
| 病床利用率 | ○% | ○% | ○% | 要改善/良好 |
| 平均在院日数 | ○日 | ○日 | ○日 | 要改善/良好 |
この表に実際の数値を入れることで、自院のどの指標が業界平均と比べて乖離しているかが一目でわかります。乖離が大きい指標が改善の優先課題になります。
比較表を作ったが「この数値の意味がわからない」「改善の優先順位が決められない」という場合は、スポット相談(60分・¥30,000)でプロアキが一緒に読み解きます。
無料ヒアリングで相談内容を確認する6: 病院経営が赤字になるのはなぜか|公開データで原因を見抜く方法


6-1: 患者減少・地域人口変化・診療報酬の影響を検証する
公開データで赤字の原因を分析する際、まず外部要因と内部要因を切り分けることが重要です。
外部要因の検証
地域医療情報システムで自院の立地する二次医療圏の人口推移を確認します。
患者数の減少が地域全体の人口減少に連動している場合、これは外部要因です。外部要因が原因の収益低下は、内部の経営改善だけでは解決できません。機能転換・地域連携強化・広域からの患者獲得といった戦略的な対応が必要になります。
診療報酬の影響は、改定年度前後での収益変化として現れます。改定内容と自院の収益変化を対照させることで、どの診療行為・加算が影響を受けたかを特定できます。
データで確認すべき指標
新入院患者数・外来患者数の年次推移を確認します。患者数が減少しているにもかかわらず収益が維持されている場合は単価の改善、収益も同時に下がっている場合は患者獲得と単価の両方が課題です。
6-2: 人件費高騰・スタッフ不足・業務負担増が収支を圧迫する要因
人件費率が全国平均を大幅に上回っている場合、以下の原因が考えられます。
採用コストの増大
医療職の求人倍率は高止まりしており、特に看護師・理学療法士・診療放射線技師などの採用に人材紹介会社を使うケースが増えています。看護師1人の採用に際して紹介会社に支払う手数料は、年収の20〜30%程度になるケースもあります。採用チャネルの見直し・自院採用の仕組みづくりが人件費抑制の有効な打ち手になります。
時間外労働・残業コスト
2024年4月から医師の時間外労働規制が適用されており、勤務体制の再設計が求められています。適切な業務分担ができていない場合、特定の職種に業務が集中して残業コストが膨らみます。
適正配置の見直し
患者数・在院日数・診療密度に対して人員配置が適切かを検証します。病床利用率が低下しているのに人員を維持している場合、人件費率は必然的に上昇します。
6-3: 外部要因と内部管理の両面から赤字原因を分析する
赤字の原因分析で重要なのは、外部要因(自院ではコントロールできない要因)と内部要因(自院の経営努力で改善できる要因)を切り分けることです。
外部要因が主因の場合は、経営の方向性を変える戦略的な意思決定が必要になります。機能転換・他病院との統合・診療圏の拡大などがその選択肢になります。
内部要因が主因の場合は、調達コストの最適化・業務プロセスの効率化・加算算定の精度向上といった改善施策が有効です。
公開データによる比較分析で重要なのは「平均と比べてどこがズレているか」を特定することです。ズレが大きい指標の背景にある原因を掘り下げることが、的確な改善策立案につながります。
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7: 比較結果を病院経営改善に生かす|成功事例に学ぶ施策
7-1: 病院経営改善事例に見る黒字化の成功パターン
公開データを活用した経営改善で成果が出やすいパターンには共通点があります。
加算算定の精度向上
複雑化する診療報酬の加算体系において、「取れるはずの加算が取れていない」状態は多くの病院で発生しています。医事課・看護部・診療科が連携して加算要件を定期的に点検する体制を作ることで、追加の投資なく収益を改善できるケースがあります。
在院日数の適正管理
退院支援専従スタッフの配置・地域の介護・リハビリ施設との連携強化によって在院日数を適正化した病院では、病床利用率を維持しながら収益を改善した事例があります。
外来・紹介患者の獲得強化
地域の診療所・クリニックとの連携を強化し、紹介患者を増やすことで外来・入院の患者数を安定させた事例があります。地域連携室の機能強化・訪問による関係づくりが有効な手段となっています。
7-2: 医療連携・地域連携・機能再編で収益改善を進める方法
地域医療構想に沿った機能再編は、中長期的な経営改善の軸になります。自院の機能を地域の需要に合わせて見直すことで、過剰な設備・人員の維持コストを削減しながら収益の安定を図ることができます。
退院後の患者を地域のクリニック・介護施設・在宅サービスにつなぐ体制を作ることで、病床を次の患者に効率よく提供できるようになります。
7-3: 組織運営の効率化とコスト管理で利益確保を目指す
調達コストの最適化
医療機器・医療IT・消耗品の調達コストは、交渉・比較・仕様の見直しによって削減余地があります。
特に設備更新や電子カルテ・医療機器の導入時は、複数ベンダーからの見積もり比較と仕様の適正化によって、数百万円単位のコスト削減につながるケースがあります。
業務プロセスの効率化
医療DX推進加算の算定を目指す流れの中で、電子カルテ・オンライン資格確認・文書電子化といった業務の電子化が進んでいます。
8: 調達・設備投資の視点から経営改善を進める方法
8-1: 病院経営改善で見落とされがちな調達コストの実態
病院経営の改善策として語られるのは、患者数の増加・加算の取得・人件費の管理が中心になりがちです。
医療機器やITシステムの調達は、多くの場合「出入り業者の提案をそのまま採用する」という形で行われています。複数社からの比較見積もりを取らない・仕様の必要性を精査しない・保守契約の条件を見直さないという状態が続くと、割高な調達が常態化します。
8-2: 医療機器・電子カルテの調達コスト適正化
医療機器と電子カルテの更新は、数百万円から数千万円規模の支出を伴います。この調達の妥当性を判断するには「売る側の論理」と「買う側の現場」の両方を知っていることが必要です。



具体的に確認すべき点は以下の通りです。
見積もりに含まれるハードウェア・ソフトウェア・保守の内訳が適切か、自院の規模と使用頻度に対して過剰なスペックになっていないか、保守契約の内容と費用が他社と比較して妥当か、更新タイミングが業者の都合で前倒しされていないかです。
これらを第三者の視点で確認することで、同等の機能をより低いコストで調達できるケースは少なくありません。
8-3: 調達の透明性を高める体制と外部専門家の活用
院内だけで調達の適正化を進めようとすると、ベンダーとの情報格差・専門知識の不足・担当者の交渉経験の少なさという壁にぶつかります。
特定の製品・業者を売り込む立場ではない、中立な専門家のセカンドオピニオンを活用することで、見積もりの妥当性判断・仕様の最適化・交渉の補助を低コストで行うことができます。
大規模なコンサルティング契約ではなく、必要な時だけスポットで相談できる形が、中小規模病院には特に適しています。
医療機器・電子カルテ・ITシステムの見積もり精査・仕様確認・ベンダー交渉支援はスポット相談(60分・¥30,000)で対応しています。発注前の1回で、数百万円単位のコスト差が生まれることがあります。
無料ヒアリングで相談内容を確認する9: 今後の病院経営戦略|開業・医療法人・地域医療の変化に対応する
9-1: 日本の医療政策と今後の地域医療構造を踏まえた対応策
日本の医療政策は、高齢化・人口減少・財政制約という3つの構造的課題に対応するために、病院の機能分化・連携強化・効率化を推進する方向で動いています。
この流れの中で個別の病院に求められるのは、「地域の中で自院がどの機能を担うのか」を明確にし、その機能に経営資源を集中させることです。すべての機能を維持しようとすると、どの領域でも中途半端になり、収益・質・人材確保のすべてで競争力を失うリスクがあります。
2040年に向けて高齢者人口がピークを迎える地域では、急性期よりも回復期・慢性期・在宅医療の需要が増加します。地域の人口動態データを定期的に確認し、5〜10年後の需要変化を見越した機能の見直しを今から始めることが重要です。
9-2: 開業病院・医療法人・中小施設が取るべき経営戦略
強みの領域への集中
診療科・患者層・地域において自院が優位性を持てる領域に経営資源を集中させます。「何でもできる病院」ではなく「この地域でこの機能なら自院に」という明確なポジションを持つことが、患者獲得と収益安定の基盤になります。
固定費の構造を軽くする
中小病院では、過大な設備投資・不要な機能維持が固定費を押し上げ、経営の柔軟性を失わせます。設備更新のタイミングで「本当に必要か」「リースと購入どちらが有利か」「過剰スペックになっていないか」を第三者目線で確認することが、中長期のコスト構造改善につながります。
9-3: 自院データを継続調査し施策を作成・実行するポイント
診療報酬改定・地域の競合環境の変化・患者動態の変化に応じて、定期的に更新する必要があります。
実務上の推奨サイクルは、月次で患者数・収益の推移を確認、四半期で主要経営指標をモニタリング、年次で公開データを使った業界比較・地域分析を実施、という3段階です。
分析結果を施策に落とし込む際は、「何を・いつまでに・誰が・どう変えるか」を明確にしてください。分析だけで終わる改善活動は成果につながりません。必要に応じて外部専門家のサポートを活用し、実行まで完結させることが経営改善の要点です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 病院経営の公開データはどこで無料で入手できますか?
A. 主な入手先は4つです。厚生労働省の「医療経済実態調査」と「病院経営管理指標」、WAM NETの「経営分析参考指標」、総務省の「病院事業決算状況・病院経営分析比較表」(公立病院対象)です。いずれも無料で利用できます。自院のベンチマーク比較にはWAM NETの経営分析ツールが最も手軽で実用的です。
Q2. 自院の病床利用率が低い場合、まず何を確認すべきですか?
A. まず低下の原因が外部要因か内部要因かを切り分けてください。地域の人口減少・競合施設の増加が原因の場合は外部要因で、戦略的な機能転換や地域連携強化が必要です。紹介体制の弱さ・退院支援の遅れ・診療の質に関する評判が原因の場合は内部要因で、それぞれに対応した改善策があります。
Q3. 人件費率が高い場合、すぐにスタッフを減らすべきですか?
A. 安易なスタッフ削減は避けてください。人員を削減すると残ったスタッフの負担が増加し、離職率が上昇して採用コストがさらに増えるという悪循環に陥るリスクがあります。まず業務プロセスの効率化・適正配置の見直し・採用チャネルの最適化から着手することを推奨します。
Q4. 医療機器や電子カルテの見積もりが高すぎるかどうか、どうやって判断しますか?
A. 単独の見積もりだけでは判断できません。最低3社から同一条件の見積もりを取得し、ハードウェア・ソフトウェア・保守の内訳を同じ軸で比較することが基本です。それでも「この仕様が本当に必要か」「保守条件は妥当か」といった専門的な判断が難しい場合は、売る側でも買う側でもない中立な専門家のセカンドオピニオンを活用することが有効です。
Q5. 経営改善の施策を決める前に、外部専門家に相談するメリットはありますか?
A. 自院の担当者だけで分析・改善策立案を行う場合、「自院の当たり前」が判断基準になりやすく、業界全体の相場感やベンダーの交渉余地を見落とすリスクがあります。特定の製品やサービスを売る立場ではない中立な専門家のセカンドオピニオンを活用することで、見積もりの妥当性確認・仕様の最適化・改善施策の優先順位づけを客観的に行うことができます。
この記事のまとめ
- 病院経営の公開データはWAM NET・厚生労働省・総務省から無料で入手できます。まずWAM NETの経営分析ツールから始めるのが最も手軽です。
- 比較分析は「同規模・同機能・同地域」の病院に絞ることで精度が上がります。全国平均との比較は出発点に過ぎません。
- 赤字の原因は外部要因(人口減少・診療報酬改定)と内部要因(調達コスト・加算取り漏れ・業務効率)を切り分けて分析することが重要です。
- 医療機器・電子カルテの調達コストは見直されないまま放置されやすく、第三者の視点による確認で大きな改善余地が見つかるケースがあります。
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