【2026年10月施行】医療情報化推進方針を調達視点で読む|2028年度100%・ノンカスタマイズ化・認証制度

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2026年9月30日、厚生労働省は「医療情報化推進方針」(令和8年厚生労働省告示第370号)を公布し、10月1日から施行しました。地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律第11条の2第1項に基づく、法定の方針です。

これまで医療DXの方向性は「工程表」という政府方針レベルで示されてきました。それが今回、厚生労働大臣が定める告示として法的な位置づけを得たことになります。

内容を読むと、電子カルテの調達に直接影響する記述が複数あります。特に注目すべきは「ノンカスタマイズを前提とするパッケージ版・電子カルテ製品の普及推進」という一文です。これは病院が長年積み上げてきたカスタマイズ文化を、国が正面から転換させようとしていることを意味します。

本記事では、この方針を調達実務の視点から読み解き、規模別に自院が今すべき判断を整理します。

目次

1: 医療情報化推進方針とは|2026年10月1日施行の法定方針

1-1: 告示の概要と法的根拠

医療情報化推進方針は、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第64号)第11条の2第1項の規定に基づき、厚生労働大臣が定めるものです。

方針が定める「医療情報化推進」とは、地域における効率的かつ質の高い医療提供体制の構築その他の国民の保健医療の向上及び福祉の増進に資する情報の活用の推進、並びにその基盤の整備及び運営を指します。

公布は2026年9月30日、適用は医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)附則第1条第5号に掲げる規定の施行日である2026年10月1日からです。

1-2: 対象期間は2026年10月〜2030年3月の3年半

本方針の対象期間は、2026年10月1日から2030年3月31日までの3年半です。医療計画や介護保険事業計画のスケジュールを踏まえ、第1期は3年半、その後は当面3年ごととする予定とされています。

この「3年半」という期間設定は実務上重要です。電子カルテの更新サイクルが概ね5〜7年であることを考えると、この方針の期間中に更新時期を迎える医療機関は、方針の内容を前提にした選定を迫られることになります。

1-3: なぜ「方針」が法定化されたのか

これまで医療DXの方向性は「医療DXの推進に関する工程表」(2023年6月医療DX推進本部決定)という政府決定で示されてきました。今回、告示という形式に格上げされた背景には2つの意味があります。

第一に、政策の継続性の担保です。政権や担当大臣が変わっても、法律に基づく方針として維持されます。

第二に、実施主体へのガバナンスです。同じ医療法等改正法により、社会保険診療報酬支払基金は2026年10月にDX審査支払機構へ改組され、中期計画・年度計画を策定することとされました。年度計画は厚生労働大臣の評価対象となります。方針は、その中期計画の基本となるべき事項を定める役割も担っています。

2: 「オンプレミスのたこつぼ化を越える」という基本方向

2-1: 方針が掲げるキーメッセージ

方針は、医療情報化推進の意義として次のキーメッセージを掲げています。

点で進んできたDXを、国がハブとなって”線”につなぎ、やがて”面”へ。出典:厚生労働省「医療情報化推進方針」(令和8年厚生労働省告示第370号)

そして基本的な方向として、より踏み込んだ表現が使われています。

オンプレミスのたこつぼ化を越え、クラウドで基盤をつなぎ直す。出典:同上

「たこつぼ化」という言葉を行政文書で使っている点に、現状認識の強さが表れています。各医療機関が個別に最適化したシステムを構築した結果、相互につながらない構造になっているという問題意識です。

2-2: クラウド移行で実現する3点

方針は、クラウドへの移行により以下の3点の実現を図るとしています。

  • 業務効率化・生産性向上:医療機関の情報システムのクラウド化により、AI-Readyなデータ環境を構築し、医療機関内で普及してきているAIを活用した業務効率化ツール等の導入を容易にする
  • セキュリティ対策:クラウド化することで、サーバ等の管理強化やサイバー攻撃に対する監視を効率的に実施し、サイバーセキュリティ対策を強化する
  • データの共有:クラウド技術を活用したデータ連携基盤の構築により、他の医療機関等との情報共有の円滑化やPHRの個人への還元を進め、創薬や医療デジタルサービスの開発等のためのデータの二次利用を促進する
サイト運営者<br>プロアキ

注目すべきは1点目の「AI-Readyなデータ環境」という表現です。

クラウド移行がAI活用の前提条件として位置づけられています。2026年度診療報酬改定でAI活用による施設基準の緩和が導入されたこととあわせて読むと、国の設計が一貫していることがわかります。

2-3: 方針が目指す社会像

方針は、医療等サービスの安定的な提供、質の向上と患者の利便性向上、制度の持続可能性の確保と国民負担の軽減、個人の健康増進への寄与、サービス提供体制の強靱化という5点を実現することにより、「国民一人ひとりにとって最適で質の高い医療等サービスが安定的・持続的に受けられる社会」を目指すとしています。

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3: 期限が切られた数値目標

サイト運営者<br>プロアキ

方針で最も実務に影響するのが、期限付きの数値目標です。

期限目標対象
2028年度までに電子カルテ普及率100%200床以上の病院(療養病床等が中心の病院を除く)
2030年末までに電子カルテ普及率約100%必要な患者の医療情報共有が可能な電子カルテ
2030年末までにサイバーセキュリティ対策100%地域の拠点となる病院の対策
2030年末までにクラウドネイティブ型の環境整備大病院向けクラウドネイティブ型製品の提供
厚生労働省「医療情報化推進方針」の目標を整理

3-1: 2028年度までに200床以上100%の意味

日本医師会が2026年7月に公表した実態調査では、200床以上の病院における電子カルテ導入率は84.1%、未導入率は15.9%でした。

つまり、残る約16%の病院が2028年度までに導入を完了する計算になります。期間は実質2年半です。導入の検討から稼働まで通常1年以上かかることを考えると、未導入の病院にとっては既に準備を始めるべき時期に入っています。

3-2: 2030年末までに約100%という法律上の規定

この目標は、法律の条文に書き込まれた形になっています。方針は、2030年12月31日までに電子カルテの普及率が約100%となることを達成するよう、クラウド・コンピューティング・サービス関連技術その他の先端的な技術の活用を含め、医療機関の業務における情報の電子化を実現しなければならないという規定を踏まえたものと説明しています。

3-3: 「義務ではない」との関係をどう理解するか

ここで整理が必要です。上野厚生労働大臣は2026年7月21日の記者会見で、改正医療法による電子カルテの普及目標について「この規定の目標達成の義務は政府に課されたもの」であり「医療機関に電子カルテの導入を義務付けるものではありません」と明言しています。

今回の告示もこの構造を変えるものではありません。普及率100%の達成義務を負うのは政府であり、個々の医療機関に導入を強制する規定ではないという点は同じです。

ただし実務上の意味は変わってきます。政府が法定の方針として期限付きの目標を掲げた以上、それを達成するための施策——補助金、診療報酬上の評価、認証制度、ベンダーへの改修要請——が集中的に投入されることになります。「義務ではないが、対応しない選択肢が実質的に狭まっていく」という構図です。

方針自体も、全国医療等情報プラットフォームの構築に当たって留意する点として「電子カルテの認証制度活用によるベンダーへの改修要請」を挙げています。医療機関に直接義務を課すのではなく、ベンダー側を動かすことで市場全体を誘導する設計です。

4: 【調達の核心】ノンカスタマイズ=パッケージ版への誘導

4-1: 方針が明記した「パッケージ版・電子カルテ製品」

本記事が最も注目するのは、この一文です。

政府DXサービスへの接続機能及びサイバーセキュリティ対策を標準として備え、ノンカスタマイズを前提とする「パッケージ版・電子カルテ製品」の普及等を推進する。出典:厚生労働省「医療情報化推進方針」

これは、クラウドネイティブ型製品が普及するまでの経過的な対応として、政府DXサービスに対応する電子カルテ(オンプレミス型等)の普及に向けた取組として示されたものです。

「ノンカスタマイズを前提とする」という表現が、行政文書に明記された意味は大きいと考えます。これまで病院の電子カルテ調達は、自院の業務にシステムを合わせるカスタマイズが当然という文化の上に成り立ってきました。方針はその前提を逆転させようとしています。

4-2: なぜ国がノンカスタマイズを推すのか

サイト運営者<br>プロアキ

理由は方針全体の構造から読み取れます。

相互運用性の確保:各病院が独自仕様を積み上げると、電子カルテ情報共有サービスへの接続も、データの標準化も進みません。「たこつぼ化」の原因そのものがカスタマイズです。

セキュリティ対策の標準化:カスタマイズされたシステムは、セキュリティパッチの適用やバージョンアップが個別対応になります。全国規模でセキュリティ水準を引き上げるには、標準構成の製品が普及している方が効率的です。

コストの抑制:方針は、留意点として「費用対効果を踏まえたシステムの導入判断」を挙げています。カスタマイズが費用を押し上げている現実への認識があることがうかがえます。

4-3: 日医調査が示したカスタマイズのコスト

サイト運営者<br>プロアキ

この方向性の妥当性は、数字が裏付けています。

日本医師会が2026年7月に公表した調査では、200〜299床の病院における電子カルテの導入費用は平均約2億5300万円、年間保守費用は約2300万円でした。そしてリプレイス費用は約2億8900万円と、当初の導入費用を上回っています。これはすべての規模帯で共通する傾向でした。

リプレイス費用が導入費用を超える主因の一つが、長年蓄積されたカスタマイズの再現費用です。調査では「ベンダー変更時の費用が法外である」という医療機関からの声も紹介されています。

つまり国が推すノンカスタマイズ化は、理念の問題ではなく、病院自身の費用構造を軽くする方向でもあります。

4-4: 自院のカスタマイズをどう扱うか

とはいえ、現場の抵抗なしにカスタマイズを捨てることはできません。長年使ってきた画面や帳票が変わることへの反発は必ず生じます。

実務的な進め方は、更新の1〜2年前からのカスタマイズの棚卸しです。

現行システムに実装されているカスタマイズを一覧化し、それぞれが実際に使われているかを各部門に確認します。

導入時に「必要」と言われて作った機能が、実際にはほとんど使われていないケースは珍しくありません。使われていない機能を次回に持ち込まなければ、その再現費用がまるごと削減できます。この作業に外部費用はかからず、院内の情報システム担当と各部門で進められます。

そして残ったカスタマイズについて、「業務側を変えれば不要になるもの」と「どうしても必要なもの」を切り分けます。この切り分けができている病院とそうでない病院では、次回更新の費用が大きく変わります。

5: 認証制度と調達評価軸の変化

5-1: 2026年度中に構築される認証制度

方針は、電子処方箋管理サービスや電子カルテ情報共有サービス等の政府DXサービスに接続すること等を要件とする標準仕様に即したクラウドネイティブ型電子カルテの認証制度を2026年度中に構築し、認証された電子カルテ製品の普及を促進するとしています。

これは調達の評価軸を根本から変える可能性があります。これまで電子カルテの選定は、機能・価格・サポート体制・導入実績といった軸で行われてきました。ここに「認証を受けた製品かどうか」という客観的な基準が加わります。

認証制度が立ち上がれば、ベンダーに対して「認証取得の予定はあるか」「いつ取得するか」を確認することが、選定の必須項目になります。

5-2: 大病院向けクラウドネイティブ型製品の開発・普及支援

方針は、次世代病院情報システムへの刷新を見据え、大病院向けのクラウドネイティブ型製品(電子カルテ・部門システム)の一体的・集中的な開発の支援や普及の支援を行うとしています。

また前提として、電子カルテ・部門システムにおける標準コード・マスタ及び交換規約の整備(恒久的な管理体制の整備を含む)並びにクラウド間連携を進めることにより、システム全体の効率性及び相互運用性の向上を図るとしています。

「電子カルテ・部門システム」が一体で扱われている点が重要です。大規模病院の調達で費用が膨らむ最大の要因は、放射線・検査・薬剤・手術などの部門システムとの連携です。ここを含めた標準化が進めば、連携費用の構造が変わる可能性があります。

実際、2026年8月にはメドレーが病院・有床診療所向けのクラウドネイティブ電子カルテ「MALLクラウド」の開発を発表し、2027年1月以降の段階的提供を目指すとしています。方針が示す方向に沿った製品が、市場に出始めている段階です。

5-3: 標準型電子カルテ(導入版)と歯科の動き

200床未満の中小規模の病院・診療所については、標準型電子カルテ(導入版)について2026年度中の完成を目指して開発を進めるとともに、医療機関による導入を促進し、政府DXサービスへの円滑な接続を促していくとされています。

歯科電子カルテについては、標準仕様の内容を今年度から検討し、2027年度中の策定を目指すとともに、認証制度の構築を進めるとしています。その後、歯科の標準仕様に準拠したクラウドネイティブ型電子カルテの普及を目指す方向です。

5-4: 次回更新で確認すべき項目

方針を踏まえると、次回の電子カルテ選定でベンダーに確認すべき項目は以下のように整理できます。

  • 標準仕様への対応状況と対応予定時期
  • 認証制度への対応方針(取得予定の有無と時期)
  • クラウドネイティブ型製品の開発計画
  • 政府DXサービス(電子処方箋・電子カルテ情報共有サービス)への接続機能
  • パッケージ版製品のラインナップと、カスタマイズなしで運用可能な範囲
  • 標準形式でのデータ出力の可否・費用・期限
  • 部門システムとの標準的な連携方式への対応

これらは口頭ではなく書面で確認することを推奨します。選定時点の回答が、次々回の更新時における交渉力を決めることになります。

6: サイバーセキュリティ|期限が明確になった

6-1: 基幹インフラ制度の対象となる病院

方針は、経済安全保障推進法の改正(令和8年法律第38号による改正)に基づく基幹インフラ制度について言及しています。

施行時に各地方(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州・沖縄)につき少なくとも1病院を指定することを検討しているとされ、対象となる病院については、指定後1年以内にセキュリティ対策状況の点検、BCP対策を含む緊急的な対応及び致命的な脆弱性がないことの確認・対応を完了するとしています。

医療機関が経済安全保障の枠組みで基幹インフラとして指定される——これは従来の医療情報セキュリティの文脈とは異質の、国家安全保障レベルの位置づけです。該当する可能性のある病院(特定機能病院を念頭とされています)は、指定の動向を注視する必要があります。

6-2: その他の特定機能病院は2028年度まで

基幹インフラ制度の対象外となるその他の特定機能病院についても、2028年度までにセキュリティ対策状況の点検及びBCP対策を含む緊急的な対応を完了するとされています。

そしてこれらの病院については、2030年度までに外部接続点の適正化を実施することとされています。

6-3: 2030年度までの当面の対策

システム刷新を図る間の当面の対策として、2030年度までに地域の拠点となる病院を中心に、以下を図るとしています。

  • ネットワークの外部接続点の監視等による適正化の推進
  • 多要素認証やシステム管理ツールの導入
  • 人材の育成と有効活用

この3項目は、いずれも調達を伴います。外部接続点の監視にはネットワーク機器とSOC(監視サービス)、多要素認証には認証基盤、システム管理ツールには資産管理・パッチ管理の仕組みが必要です。電子カルテの更新とは別の予算枠で、セキュリティ投資が発生することを認識しておく必要があります。

6-4: 中小病院が今から準備できること

特定機能病院に該当しない中小規模の病院でも、「地域の拠点となる病院」に含まれる可能性があります。また医療機関へのランサムウェア攻撃は規模を問わず発生しており、方針の対象外だから安全ということにはなりません。

今から着手できるのは、現状の把握です。自院のネットワークに外部接続点がいくつあるか(VPN、保守回線、ベンダーのリモート接続など)、それぞれが監視されているか、多要素認証が導入されているか。この棚卸しは外部費用なしで始められ、投資計画の土台になります。

7: 電子カルテ情報共有サービスの全国運用と情報拡大

7-1: 2026年度冬に全国運用開始

電子カルテ情報共有サービスについては、2026年度冬をめどに、臨床現場等で支障なく運用が可能な文書・情報から、全国で運用を開始することとされています。

令和7年医療法等一部改正法により、医療機関は患者の同意によらず、電子診療録等情報を電子カルテ情報共有サービスを介して他の医療機関、薬局、保険者及び患者との間で共有することが可能となりました。

国とDX審査支払機構、国民健康保険団体連合会は、モデル事業で検知した課題や有識者の意見等を踏まえて課題解決を行いつつ、現場運用に沿ったシステムの開発を行うとともに、電子処方箋との一体的な導入を進めるとしています。

この「一体的な導入」は調達上のポイントです。電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスを別々に対応すると改修費用が二重に発生します。まとめて計画することで費用を抑えられます。

7-2: 共有情報の拡大ロードマップ

共有する情報は段階的に拡大される予定で、方針には具体的な時期が示されています。

時期拡大される情報
2026年度介護事業所向けの診療情報提供書の開発及び実装
2027年度以降訪問看護指示書・計画書・報告書等
2029年度めど歯科情報(2026年度に内容決定)
2030年めどトレーシングレポート等
2026年度に検討ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の記録項目
厚生労働省「医療情報化推進方針」の記載を整理

情報が拡大するたびに、電子カルテ側の対応が必要になる可能性があります。ベンダーとの保守契約で、こうした制度改正への対応がどこまで含まれるかを確認しておくことが、将来の追加費用を抑える備えになります。

7-3: 二次利用|電子カルテ情報データベースは2028年度から

電子カルテ情報共有サービスで共有される臨床情報を匿名化又は仮名化して提供する電子カルテ情報データベースについて、2028年度からの運用開始に向けて開発に取り組み、運用開始後は行政機関、研究者や企業等による利用の促進を図るとされています。

自院の診療データが研究・開発のために二次利用される枠組みが整備されるということです。院内での説明体制や、患者への情報提供のあり方を検討しておく必要が出てきます。

8: DX審査支払機構への改組

8-1: 支払基金からの改組と中期計画

医療法等改正法により、社会保険診療報酬支払基金は2026年10月にDX審査支払機構へ改組され、中期計画及び年度計画を策定することとされました。

中期計画の期間は、医療情報化推進方針と同じく2026年10月1日から2030年3月31日までです。計画期間中の重点取組事項として、医療DXサービス利用のための基盤整備、全国医療等情報プラットフォーム、医療等情報の二次利用が挙げられています。

8-2: 厚生労働大臣による評価の仕組み

機構は各事業年度の終了後3月以内に、厚生労働大臣に対して業務の実績や自己評価結果を明らかにした報告書を提出・公表し、厚生労働大臣が総合的な評定を付して評価します。評価結果は機構に通知・公表され、機構はそれを中期計画・年度計画や業務運営の改善に反映し、反映状況を公表することとされています。

厚生労働大臣は評価結果に基づき、必要があると認めるときは業務運営の改善その他の必要な措置を講ずるよう命令が可能です。

8-3: 医療機関にとっての意味

医療機関から見ると、この改組には2つの実務的な意味があります。

第一に、医療DXの窓口が明確になることです。方針では、機構が電子カルテ情報共有サービスの開発段階から運用開始後まで、医療情報化支援基金の交付等を滞りなく実施し、医療機関の円滑なサービス導入支援を行うとしています。導入に関する照会先が整理されます。

第二に、進捗が可視化されることです。方針は留意点として「ダッシュボードによる進捗・効果の見える化、国民の理解醸成」を挙げています。普及率や対応状況が公表されるようになれば、未対応であることが外部から見える状態になります。

また方針は、機構の運営に関する事項として「システムに係る調達の最適化」「AI等の先端技術の利活用による業務の効率化及び高度化」を明記しています。発注側である機構自身にもコスト意識が求められる構造になっています。

9: 規模別・今すべき判断

9-1: 200床以上の病院

2028年度までの普及率100%目標の直接の対象です(療養病床等が中心の病院を除く)。

未導入の場合:2028年度まで実質2年半です。検討から稼働まで1年以上かかることを踏まえると、今年度中に選定を開始する必要があります。この時期に導入するなら、標準仕様対応・認証取得予定を必須条件に据えてください。

導入済みで更新が近い場合:2027年度以降、認証を受けたクラウドネイティブ型製品が市場に出てきます。保守期限に2年以上の余裕があれば、選択肢が増えてから比較する価値があります。その期間にカスタマイズの棚卸しと要求仕様の整理を進めてください。

保守期限が迫っている場合:待つリスクのほうが大きくなります。現時点で選べる製品の中から、標準仕様・認証への対応方針が明確なベンダーを選ぶのが現実的です。

9-2: 200床未満の病院・有床診療所

2028年度の目標の直接対象ではありませんが、2030年末の「約100%」には含まれます。

方針は200床未満に対して、標準型電子カルテ(導入版)や標準仕様に即した低価格のクラウド型電子カルテの導入を進めるとしています。2027年度には標準型電子カルテ(導入版)の医療機関による導入が開始される予定です。

紙カルテ運用を続けている施設は、この導入版が選択肢として現実的かどうかを、仕様が公表された段階で検討することを推奨します。フル機能の電子カルテを導入するより負担が小さい入口になる可能性があります。

9-3: 無床診療所

標準型電子カルテ(導入版)の主たる対象です。2026年度中の完成、2027年度からの導入開始というスケジュールが示されています。

現在紙カルテで運用している診療所は、今すぐ商用製品を導入するか、導入版の仕様を待つかの判断があります。オンライン資格確認やマイナ保険証対応で既にシステム投資をしている場合、それらとの接続性も含めて検討してください。

9-4: すべての規模に共通する準備

規模を問わず、今日から着手できることがあります。

  1. 現行システムの保守期限を確認する——判断の起点はここです
  2. カスタマイズの棚卸し——次回更新費用を直接下げます
  3. 現行ベンダーに標準仕様・認証への対応方針を書面で確認
  4. 外部接続点の棚卸し——セキュリティ投資の計画に必要です
  5. 電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスへの対応状況を整理

いずれも外部費用をかけずに院内で進められます。そして選択肢が増えたときに、準備している病院とそうでない病院では得られる条件が変わります。

10: まとめ|方針は「待つ」ための材料ではなく「動く」ための地図

医療情報化推進方針が示したのは、2030年3月までの3年半に何が起きるかという地図です。

2026年度中に認証制度が構築され、標準型電子カルテ(導入版)が完成し、電子カルテ情報共有サービスが全国運用に入ります。2027年度には認証クラウドネイティブ型製品の普及が始まり、2028年度には200床以上の普及率100%とセキュリティ対策の完了が求められます。

電子カルテの導入そのものは、依然として医療機関の義務ではありません。しかし施策が集中的に投入される以上、「何もしない」という選択のコストは年々上がっていきます。

調達の観点で本記事が最も重視するのは、ノンカスタマイズ化という方向性です。これは国の都合であると同時に、リプレイス費用が導入費用を上回るという現在の構造を変える、病院自身にとっての処方箋でもあります。

方針が示す期限から逆算して、自院の更新時期・カスタマイズ・セキュリティ・接続状況を整理する。それが、選択肢が増えたときに適切に選ぶための最低限の準備になります。

25 YEARS HYBRID EXPERIENCE

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業者の手の内を知り尽くした17年と、現場の痛みを背負った8年。両方の視点を持つスペシャリストが、貴院の調達を劇的に最適化します。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 医療情報化推進方針が出たことで、電子カルテの導入は義務になりましたか?

A. なっていません。普及率の目標達成義務を負うのは政府であり、医療機関に導入を義務付けるものではないという構造は変わりません。ただし補助金・診療報酬上の評価・認証制度・ベンダーへの改修要請といった施策が集中的に投入されるため、対応しない選択肢は実質的に狭まっていきます。

Q2. 2028年度までに200床以上100%とありますが、間に合わない場合どうなりますか?

A. 医療機関への罰則は定められていません。ただし目標達成に向けた施策が強化されることが見込まれ、未対応であることが診療報酬上の評価や地域連携の面で不利に働く可能性があります。また方針は進捗のダッシュボードによる可視化にも言及しており、対応状況が外部から見える状態になることも想定されます。

Q3. 今あるカスタマイズは捨てなければなりませんか?

A. 捨てることを強制されるわけではありません。ただし方針が「ノンカスタマイズを前提とするパッケージ版・電子カルテ製品」の普及を推進すると明記した以上、カスタマイズを維持する選択には相応のコストが伴い続けます。次回更新の1〜2年前からカスタマイズの棚卸しを行い、本当に必要なものだけを残す準備を推奨します。

Q4. 認証制度はいつから始まり、どう調達に影響しますか?

A. 2026年度中に構築される予定で、2027年度には認証クラウドネイティブ型電子カルテの普及開始が見込まれています。調達面では「認証を受けた製品かどうか」が新たな評価軸になります。選定時にベンダーへ認証取得の予定と時期を書面で確認しておくことを推奨します。

Q5. セキュリティ対策の期限は自院にも適用されますか?

A. 明示的な期限が示されているのは、基幹インフラ制度の対象病院(指定後1年以内)とその他の特定機能病院(2028年度まで)です。加えて2030年度までに「地域の拠点となる病院を中心に」外部接続点の適正化・多要素認証・システム管理ツールの導入を図るとされています。該当しない施設でも、医療機関へのサイバー攻撃は規模を問わず発生しているため、外部接続点の棚卸しから着手することを推奨します。

Q6. 電子カルテ情報共有サービスはいつから本格的に使えますか?

A. 2026年度冬をめどに、臨床現場で支障なく運用可能な文書・情報から全国での運用が開始される予定です。その後、介護事業所向け診療情報提供書(2026年度)、訪問看護指示書等(2027年度以降)、歯科情報(2029年度めど)と段階的に共有情報が拡大していきます。電子処方箋との一体的な導入が推奨されているため、両方の対応状況をまとめて確認することを推奨します。

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